第5話 ハイランドグループA300km選手権
2007/11/30
カテゴリ: GroupAの残像
ライター: 御堀直嗣
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ハイランドグループA300km選手権レース大会
GT-RのライバルはGT-R。そんな様相を呈してきたGroupA第5戦
カルソニックとリーボックスカイラインの戦列に、もう1台
GT-Rが戦いを挑む。と同時にそれはタイヤ戦争の始まりでもあった
Text: Naotsugu Mihori
Photo: Yoshio Moriyama / Hiromichi Kimura
By courtesy of GT-R Magazine Vol.003, Kotsu-Times Sha, 1995.
Photo: Yoshio Moriyama / Hiromichi Kimura
By courtesy of GT-R Magazine Vol.003, Kotsu-Times Sha, 1995.
最終戦を待たずしてチャンプを決めたGT-R

そのオープニングレースはグループAの第4戦として開催され、カローラFXに乗る関谷正徳/鈴木利男組がスカイラインRSターボを抑えて総合優勝した。2万1500人の観客を集めて行われたレースは、どしゃ降りに近い雨が降り、ハイパワーエンジンを搭載したFR車はそのパワーを持て余した。そのようなコンディションの中、小排気量ながらFFの特性を生かしたカローラFXが総合優勝のチャンスをものにしたのであった。
仙台ハイランドレースウェイは、1周が3.75744kmのテクニカルコースである。仙台郊外の山間部の山並みを利用したアップダウンの激しいコースで、そこへいくつものコーナーが組み合わされ、また、路面はバンピーで難攻不落のコースである。1992年には一部コースが延長され、全長4kmに伸びている。

一方、同じスカイラインGT-Rで今シーズンを戦いながら鈴鹿での1勝以外は常に2位に止まり、さらに前回の筑波ではターボトラブルで無念のリタイアも経験している長谷見昌弘/アンダース・オロフソン組のリーボックスカイラインは、カルソニックスカイラインとの50点差を何とか縮め、チャンピオン争いの可能性を最終戦まで持ち越したいところだ。リーボックスカイラインが優勝しカルソニックスカイラインが万が一リタイアすることにでもなれば、ディフェンディングチャンピオンであるリーボックスカイラインにもまだシリーズ2連覇の可能性がないわけではない。

ところで、オブジェクトTはトーヨーゴムが運営するチームだ。したがって、スカイラインGT-R用レーシングタイヤに、これまでのブリヂストン、ダンロップに加え第3のメーカーが進出することにもなる。スカイラインGT-Rの開発段階から採用されてきたブリヂストンに対し、レースデビューからの採用となったダンロップが所々でパフォーマンスを発揮しながらも、主にグリップ持続性の幅で一歩先を行くブリヂストンの行く手を遮るのに苦戦している状況にあって、さらに後発のトーヨーはどのような戦い振りを見せるのか。3メーカーによるタイヤ開発競争は激化することになるのだろう。

その内容は、車両価格が必要とされるパーツ一式とリース契約となるエンジン1基で4000万円。これに、一切のパーツを利用してのマシン製作費が1000万円という値段。また、スペアパーツを用意するとなるとさらに5000万円が必要になる。タイヤやガソリン、オイルなどと日常のメンテナンス代を除いた、レースに参加するまでの時点で1億円の予算が必要になるということになる。
600馬力近いツインターボエンジンを搭載し、複雑な四輪駆動を電子制御する高度な技術が詰め込まれたマシン。しかも、マイナートラブル以外はトラブルフリーで走れる可能性を持ち、そして何よりスカイラインGT-R以外では優勝のチャンスがないという状況となった今では、この1億円を高いと見るか安いと見るか、難しい判断である。少なくとも、このハイテクマシンを破るライバルが登場しない限り、1億円という金額は崩れることはない。
第3勢力となるそのスカイラインGT-Rは、スポンサーノピューミニカラーに彩られて登場したが、予選でトランスファーとパワーステアリングからオイル漏れが発生。また、駆動力と操舵を受け持つフロントタイヤの負担という四輪駆動ならではの難しさを早速体験することになった。それでも、カルソニックスカイラインやリーボックスカイラインを脅かすまでには至らなかったものの、シエラRS500をしりぞけ決勝レースを3位で完走。スカイラインGT-R以外は勝てない、さらに表彰台に登ることもできないという現実を他の参加者に見せつけたのであった。

1回目の予選では、まず長谷見のリーボックスカイラインが1分44秒729を記録。それまでのコースレコードである1分46秒413を簡単に破った。対するカルソニックスカイラインは、このレースウイークにマイナートラブルが発生してセッティングの遅れを見せ、1回目の予選はセッティング時間に費やさなければならなかった。しかも、予選中のコース上に多量のオイルが出るというタイミングの悪さも重なり、1分48秒台に止まった。
勝負どころとなった2回目の予選でまず星野は、カルソニックスカイラインを1分43秒881に導き、リーボックスカイラインが1回目に記録したタイムを上回った。これを知った長谷見は、再度タイムアタックを行い、同じ1分43秒台へ入れるのだが、わずかに星野に及ばず43秒974。それでも自分のタイムに急接近してきた長谷見の走りを見た星野は、ターボで過給された空気密度をさらに高めよりパワーを得るためインタークーラーを水で十分に冷やし、二度目のタイムアタックに出た。そしてなおもタイムを縮めた星野は、1分43秒793を出したのであった。
長谷見の挑戦はさらに続いた。すでに規定の3セットの予選用タイヤを使い切っていたが、そのうちの1セットを左右入れ替え、カルソニックスカイライン同様にインタークーラーを水で冷やしてコースインする。渾身のタイムアタックも、ここではクリアラップが取れずに1分44秒台に止まった。こうしてカルソニックスカイラインのポールポジションが決まった。2回目の予選直前までマシンセッティングでドタバタしたカルソニックスカイラインだったが、星野は見事に挽回した。それはチャンピオンへの執念としか言いようがないだろう。

ポールシッターのカルソニックスカイラインと、グリッドの隣に並ぶリーボックスカイラインはレインタイヤを選んだ。その他のチームは、溝の浅いレインタイヤか、スリックタイヤにグルービングを施したカットスリックを装着していた。
スタートで飛び出したのはカルソニックスカイライン。その背後にはリーボックスカイラインが続く。今シーズン見慣れたかたちでレースは始まった。だが、星野の乗るカルソニックスカイラインはペースが上がらず、すぐに長谷見のリーボックスカイラインがトップの座を奪った。ともにレインタイヤを選んだとはいえ、銘柄は異なる。その特性の違いが出たのか?
いずれにしても、ここでリーボックスカイラインがカルソニックスカイラインを引き離しに掛った。だが、数周のうちにカルソニックスカイラインがリーボックスカイラインに急接近。トップを奪回した。優勝を争う2台のスカイラインGT-Rが序盤にシーソーゲームを展開した。

「そんなタイヤじゃダメだ!」
と叫ぶが、時すでに遅し。交代した鈴木利男はピットを後にしていた。そして数周後、予定外のピットインをしたカルソニックスカイラインはレインタイヤに交換することになった。この1回余計なピットインによってリーボックスカイラインは労せずにトップに返り咲いた。

次は、1985年以降一度も国産車の優勝が無いインターTECである。果たしてスカイラインGT-Rはそのレースも制し、無敵のシリーズ全勝を達成するのだろうか。
