GT-R|WEBカタログ/1995- BCNR33GT-R詳解

GT-Rカタログ|BCNR33GT-R

大きくなったとデビュー時は不評だったR33GT-R。しかし、その走りの性能は完全にR32GT-Rを凌駕。日本にはGT-Rというスーパーカーがあると欧州に知らしめ、英国に100台限定ながら正式に輸出された。4ドア版を復活させ、ストイックなまでに走行性能の進化を求めたその歴史を振り返る。

速さと快適性の融合、曲がるGT-Rの登場

1995年1月6日。第二世代GT-Rとしては2代目モデルのR33GT-Rは、東京・晴海の東京オートサロンの会場で発表された。R33GT-Rは、R32GT-Rで指摘された欠点をことごとく改良するということに開発の重点が置かれた。一方、生産性向上のためにローレルと車台の共通化を図ったことで、ボディサイズは全長がR32GT-Rよりも130mm長くなり4675mmに。全幅は25mmワイドな1780mm。そして全高は5mmアップの1360mmとなり、数値以上に大きく見えるようになった。より速く走るということと、大型化したボディ。この相反する難問をクリアするため、ニュルブルクリンクでのテストが積極的に行われた。

R32GT-Rの前後の重量配分はフロントヘビーで、アンダーステアの強いクルマだった。さらに燃料タンクをトランクの床下に搭載していたので、リヤのオーバーハングに重量物があることも不利だった。しかも、トランクの床下にタンクがあるということは、燃料が増減することでも運動性能に少なからず影響を与える。それはデビュー以来変わらず、17インチタイヤを装備したV specⅡでも変わらなかった。それに対しR33GT-Rは、ホイールベースが長くなったことを利用して、前後の重量バランスを改善することができたのだ。樹脂製燃料タンクをリヤシート下に設置し、バッテリーもトランク内に移設し重量物を可能な限り車体の中心に集めた。さらにヘッドライトの樹脂化やインタークーラーの軽量化などで、オーバーハング部分を軽くして慣性モーメントを低減。旋回性能を向上させたのだ。そのレイアウトは、「ハイトラクション・レイアウト」と名付けられた。

また、ボディ剛性も大幅に強化。エンジンルームとトランクの前後ストラットバーをはじめ、フロア下にもフロアクロスバーなど30カ所以上の補強が追加された。その結果、ベースとなったR33型スカイラインGTSよりねじり剛性で40%アップ、R32型スカイラインに対しては、1.5倍ものレベルに強化された。ボディそのものの空力特性もCd値を例にとるとR32GT-Rの0.40から0.35に向上。ボディのあらゆる部分で進化を遂げていた。R33GT-Rはボディの大きさを言い訳にしない、徹底した設計と開発テストで作り上げられたのだ。

BCNR33GT-R VスペックN1フロントBCNR33GT-R VスペックN1リア

走りを進化させた電子制御システム

ラインナップは、標準車と呼ばれるGT-Rと上級グレードのVspec、それにレース用ベース車のVspecN1の3グレードが設定された。標準車がブレンボの大径ブレーキを標準装備し、R32GT-RのVスペックに相当する内容を持つ「作るべきGT-R」という位置付け。新しくアクティブLSDをリヤに組み込み、電子制御トルクスプリット4WDシステムのチューニングを専用に施した「アテーサE-TS PRO」を搭載したVスペックは、技術者が「本当に作りたかった走りを極めるGT-R」として登場した。またVspecN1は、国内で盛んになっていたノーマル車に近いN1というカテゴリーのレースへの参戦を想定したモデル。Vspecをベースに空冷式オイルクーラーやカーボン製のフロントディフューザー、リアウイングが標準装備され、フロントバンパーにはR32GT-R NISMOのようなエアインテークが追加された。その代わり、レースに必要のないエアコン、オーディオなどは装備されない。

アクティブLSDは油圧で制御する多板クラッチ式LSD。それをトルクスプリット4WDであるアテーサE-TS PROと統合制御することにより、前後のトルク配分とリヤタイヤの左右のトルク配分をコントロール。さらにABSによる制動力の制御を加え、駆動力と制動力の総合制御を可能にした。4輪それぞれにその時に要求される最適なトルク配分が可能となったことからコーナー進入時には、フロントタイヤにトルクを配分せずにアクティブLSDの効きを弱め、FR車のようにスムーズに回頭するよう制御。コーナー立ち上がりの加速時には、アクティブLSDの効きを強めてトラクションを稼ぐ。このためリヤタイヤの空転が減少。結果的にフロントタイヤに配分するトルクが少なくなり、パワーオン時のアンダーステアを低減させた。

4輪マルチリンクのサスペンションは、フロントのレイアウトを変更。R32GT-Rのウィークポイントだった、ガタの出やすいI型のアッパーアームがA型に変更され、取り付け剛性もアップ。サスペンションのスペックは、標準車とV specで異なる。V specにはよりハードなチューニングが施された。スプリングのバネレートを標準車が前後とも3.2kg/mmのところを、V specはフロント4.0kg/mm、リヤ5.0kg/mmと固められたのだ。それに合わせショックアブソーバーの減衰力も高められている。タイヤも標準車はポテンザRE010、V specはエクスペディアS-07と足回りに合わせたチョイスで、GT-R専用に開発された。サイズは全車、245/45R17で軽量な鍛造アルミホイールが装着された。

R32GT-Rにも採用された後輪操舵システムのHICASは、それまでの油圧式から電動式「スーパーHICAS」に進化。より横剛性を高めるとともに、従来の制御に加えヨーレイトセンサーを追加し、シャープな応答性と路面などの外乱に対する収束性を高めている。

BCNR33GT-RエンジンエンジンはR32GT-Rと同じRB26DETT型を継承。コーナリング性能とトラクション性能が向上したことにより、開発ドライバーから「もっとトルクとレスポンスを」という要求があり、若干過給圧を上げた。その結果、最高出力は自主規制いっぱいの280psと変わらないものの、最大トルクが1.5kgm増しの37.5kgmに。30kg増えた車重をこれでカバーした。エンジンをコントロールするECUは、8ビットから16ビットに進化。演算速度が速くなったことから、より精密な制御が可能となった。インタークーラーは従来の多穴管タイプから、より効率の高いインナーフィンタイプに進化。レスポンスの向上とともに冷却能力を4%向上させたうえ、重量も400g軽くなった。これらの新技術は、大きくなったボディを補って余りある効果を発揮。R32GT-Rを超える速さをもたらした。「マイナス21秒ロマン」。広告にもそう謳われたように、R33GT-RはニュルブルクリンクでR32GT-Rが記録したベストラップを塗り替えた。ファンの予想をいい意味で裏切り、「最新のGT-Rが最良のGT-R」であることを証明して見せたのである。

20080117-bcnr33-05安全性の向上が目的だった中期型

翌1996年2月には、早くも小変更を受ける。それまで運転席のみが標準装備だったSRSエアバッグが、運転席、助手席ともに標準装備のデュアルエアバッグになったのだ。本革巻きながらマーチと同じデザインだと不評だったステアリングが、スマートになった。同時に、インパネのデザインが変更になり、材質も変わっている。外観の変更は、非常にマニアック。リヤのガーニッシュが、前期型がフラットな面にSKYLINEの浮き出し文字だったのに対し、曲面のガーニッシュに変更されているのみなのだ。さらに細かいところでいうと、ABSのホイール回転センサーのハーネスが細いものに変更されていたりもする。

期間限定販売「LMリミテッド」

5月21日には、7月末までの期間限定で、ル・マン24時間レース参戦記念車としてGT-R初の特別仕様車「LMリミテッド」が発売された。このクルマは、専用の車体色「チャンピオンブルー」を採用し、N1ベース仕様と同じエアインテークダクト付きバンパー、フードトップモール、カーボンセンターリヤスポイラーを装着したもの。標準車にも、Vスペックにも設定されていた。カーボンセンターリヤスポイラーだけをオプションで装備することを考えると、お得な価格設定になっていた。約2ヶ月間に売られた台数は、わずか98台といわれている。

BCNR33GT-R最終型キセノンキセノンヘッドライトの後期型

1997年2月には、本格的なマイナーチェンジを受ける。ヘッドライトにプロジェクタータイプのキセノンヘッドライトを採用。さらに、フロントスポイラーを大型化し、下端を20mm延長。従来のフロントスポイラーもオプションで設定している。フロントバンパーは全車、N1ベース仕様と同じエアインテークを追加した。また、右側のバックランプをリヤフォグランプに変更。フロントのドアガラスにロングライフ撥水ガラスを採用。R32型では実施されなかった、外観の小さくない変更が行われたのだ。ただ、一般のクルマのグリルやテールランプのデザイン変更するマイナーチェンジとは違い、これらの変更は走行性能と安全性の向上のために行われたものそして、外観から見えないところでもっとも大きな変更が加わっていた。リヤサスペンションメンバーの取り付け部にリヤフロアステーを追加し、車体剛性を高め、操縦安定性の向上を図ったのだ。また、ABSのアクチュエーターを小型化し、軽量化するとともに制御のチューニングを行い、旋回制動時の安定性を高めている。

R33GT-R4ドア

大型ボディを活かした4ドアGT-R

1997年秋には、GT-Rと同じエンジンと駆動系を持つステージア・オーテックバージョン260RSが登場。そして1997年12月8日、かねてから登場のうわさがあった、4ドアGT-R、「スカイラインGT-Rオーテックバージョン 40th ANNIVERSARY」が発表になった。このクルマは、セダンのGTS-4にRB26DETTを搭載しただけのお手軽クルマではない。2ドアGT-Rのフロアを使い、その上に4ドアのボディを架装したもの。GT-Rのボディを4ドアで再現するため、リヤフェンダーやドアの専用部品を新たに製作し、ワイド化していることも話題になった。機械式LSDなど駆動系は、GT-R標準車と同じ。登場時には、大きくなったボディが不評だったR33GT-R。総生産台数は、R32GT-Rよりはるかに少ない、1万6520台だった。

■GT-R|WEBカタログ/1995- BCNR33GT-R前期型
■GT-R|WEBカタログ/1996- BCNR33GT-R中期型
■GT-R|WEBカタログ/1997- BCNR33GT-R後期型
■GT-R|WEBカタログ/1998- BCNR33GT-R4ドアオーテックバージョン

1993東京モーターショー参考出品車両