過去との決別 GT-R新章へ…
新型R35 GT-R 黒沢元治が斬る! 後編

Text: Motoharu Kurosawa
Photo: Chikara Kitabatake




スパ西浦モーターパークの舗装は一般道と同じものでかなり滑りやすい。
雨のスパ西浦モーターパークにて
さて、大きく重くなったGT-R。タイトなサーキットやウエット路面での走りはどうか? 愛知県蒲郡市の「スパ西浦モーターパーク」で開かれたメーカー試乗会にガンさんこと黒沢元治さんと参加。このスパ西浦モーターパークは、6月にオープンしたばかりの1周約1561mのミニサーキット。ミニサーキットとはいいながら、立体交差がありコース幅も広く、ピットなどの作りも本格的。
試乗当日は、あいにくの雨。しかし、新型GT-Rのウエット性能を試すには絶好のチャンス。果たして、「誰でも、どこでも、どんな時でも」というマルチパフォーマンス・スーパーカーの真価は発揮されるのか?


chapter 1
 『ウエット路面での動きは? そしてガンさんのR35に対する評価は…』

結果的に、今日、ウエットでよかったなと思う。ウエット路面でもGT-Rは乗りやすい。重量は重いんだけども、ホイールベースとかトレッドが広いせいか、滑り出しなんかも唐突じゃなくて、いきなりカーンとこない。滑り始め、あるいは滑ってからのコントロールも結構できるし、よく仕上げたっていうか、基本性能、基本重量、基本の寸法が持つものなのか、意外と穏やかな動きをする。
 自慢の電子デバイスは、この雨の西浦モーターパークでは、むしろトラクションコントロールをカットしたほうがいいな。入れちゃうと、安全ではあるんだけども、逆にギクシャクしてしまう。GT-Rだけにいえないが、日本の自動車メーカーのアクティブセーフティコントロールっていうのは下手だよな。ただ、危険にならない状態にコントロールするだけになっていて、VDCを入れても楽しく走れるみたいなのが全然ない。メルセデスだとかBMWなんかは、それを入れていても限界に近い楽しい走りができるんだけども。


車重の重さを感じさせないのは、ホイールベースとトレッドの比率等も大きく関係しているという
コンピュータを使っての制御だから、どうにでもなるはず。要はそれをセットする人がわかってないんだな。だから、単なるセーフティマージンを取るだけのものになっちゃってる。
まだよくなる余地は残っている。技術という意味でも自動車先進国になってるんだけども、そういうところがまだまだだな。技術そのものは素晴らしいんだけど、技術というのは理論があっての技術なんで、日本はまだそこまで行っていないところがある。今後、GT-Rだけに限らず、やっていくべきだろう。
新型GT-Rにドライでも乗った、ウエットでも乗った。その中でそんな大きなネガティブなものはない。その重量を感じないし、コントローラブルだし、曲がる、止まる。しっかりと剛性が出ている、寸法的な大きさがある、タイヤの運動性が優れている、ウエット性能も出ている。そういうのが、いろんなのがうまくマッチングしているんだろう。1700kgオーバーを感じさせない、性能をもっていると評価できる。現段階の評価は、95点あげてもいいと思う。

chapter 2 『世界に問える新たなベンチマーク』

新型GT-RはV6にすることによって前後の重量配分を最適化しているという。しかし、スポーツーカーに相応しいフィールには距離感がある
あとはロングランとか、オーナーとして持つためのメンテナンス費、それと日産はちゃんとやるっていっているけれども、日産の今までの量産車とあまりにも違うんで、サービスだとかね、そういうのがどうなるのかとか…今のところ、なんとも評価できないが。全部、それが揃ってれば素晴らしいし、それこそ、この値段設定は非常に安いと思う。反対に、そこが追いつかないとこの安さが、何の意味も無くなってしまう。
あと、新型GT-Rにないものねだりしちゃいけないけども、もうちょっと人間の感性に訴えるサウンド、振動、スポーツカーのドライブフィーリングみたいなものがほしい。それが残念だな。 






「ただ速いだけでなく、人間の感性に訴えるドライブフィールがほしい」とガンさん。
たとえば、V6よりもV8。F1みたいに高回転になるとV8でも振動出るとかいっているけども、通常使う7000rpm、8000rpmまでのV8っていうのは、非常に振動少なくて気持ちよくピシャーンと回る。さらにV10になると、もっとこう、昔のF1みたいな感じになる、いい音がする。V12になるとさらにすごい。ただ、それはそれで今度、V12になるとエンジンが長くなるし重くもなる。その寸法的な車体の問題とかいろいろ出てくるけども…。
で、昔、シングルカムからツインカム、あるいは4バルブになったときに、ぞくぞくとした楽しいエンジン音なんてものがあった。そんなのがいつの間にか、今のGT-Rみたいに、そういうことを忘れちゃったみたいだな。ただ、速ければみたいなね。足らないところというか、残念というかね。95点で足らない5点はそこが非常に大きいんだ。


しかしながら、この新型GT-Rを800万円を切るような値段で出したということはすごいことだ。すごいなという言葉使ってもいいと思う。そういう値段で作るって言うことは、本当にすごいことだよ。ある種、このGT-Rは1500万円のクルマでも通用する。逆に安すぎちゃって、日本国内だけでなく世界に輸出して、メンテナンスもちゃんと面倒見るみたいなこと日産は言っているけど、大丈夫なのかと本気で心配になるくらいだ。
値段と性能と、要は世界に対して今の時期にこれだけのものを出したっていう事実、それも他社に先んじて。これを現実に具現化したっていうのはすごい。これはもう、すごいっていう言葉よりも素晴らしい、素晴らしいクルマだ。固有名詞を出していいのかわからないけども、これを作り上げた水野君とそのスタッフ、またこのプロジェクトを許可したカルロス・ゴーンに敬意を表したい。彼らの努力と仕上がりは、認めてあげたい。

(取材・構成/GTR-WORLD.net編集部)