5年間の沈黙を破り、鳴り物入りでデビューしたNISSAN GT-R。そのキーワードが示すところは、「誰でも、どこでも、どんな時でも」安心してスーパーカーライフを楽しめるというもの。つまりは、様々な天候や路面状況下においてもGT-Rのパフォーマンスを楽しめるということだ。日産のwebサイトにもドライ路面やウェット路面はもちろんスノーロードを走るGT-Rの映像が流され、そのマルチパフォーマンスぶりをアピールしている。
 そこで、当サイトではGT-Rをスノーロードに持ち込み、その多彩な才能の最終チェックをすることにした。その模様は、既にGTR-WORLD TVにアップしてあるようにかなりのパフォーマンスぶり。今回は、他にも様々なテストを行ったので、その詳細をお届けしたい。ちなみに使用したタイヤは、純正オプションのブリヂストン製スタッドレス。


今回低ミュー路でのパフォーマンステストを行ったのは、長野県にある女神湖。
Text: Shunsuke Takeuchi
Photo: Yukio Morinaga



 さて、メインのテスト場所は長野県にある女神湖。冬のこの時期だけ凍結した湖の上に、特設の氷上コースが造られている。主に低ミュー路におけるドライビングレッスンなどに使われており、テストをするには最適な場所だ。もちろん、一般向けにも開放されているので、興味のある方は一度走られてみてはいかがだろうか。
 さて、このコースの路面は文字通り氷だ。スケートリンクと同じと考えた方が良いだろう。それだけに路面ミューも低く、重たいGT-Rにとっては苦手とするコースであると予想されるのだ。



■走破性チェック
走破性チェック
 雪道で一番不安になるのが、路面条件の悪い狭くてデコボコした登り坂。氷上コースへの出入り口はまさにそんな条件だった。夏場なら土手になっていると思われる場所で、狭い通路の上、前夜に降った新雪がフカフカ積もった坂道だ。2WD車なら「ちょっと登れるかな?」と不安に思うようなところだがGT-Rならば、心配無用。そんな坂道もトランスミッションモードをSNOWモードにすれば、右の映像のように難なくクリヤできる。さすが4WDカー!





■急発進チェック
急発進性能チェック
 停止状態から、スロットル全開の急発進の瞬間。まずはVDC ON。一瞬のホイールスピンの後、トラクションコントロールが効くのがわかる。一方、VDC OFFでは激しくホイールスピンをする。ここで注目は、前輪とほぼ後輪が同時に空転をしている点。これが第二世代のGT-Rと大きく異なる。第二世代ではリヤが空転してからフロントが空転した。前後タイヤの駆動タイミングにタイムラグがあったわけだが、新型GT-Rにはない。つまり発進の瞬間にはランエボやインプレッサなどのフルタイム4WDと同等なのだ。それだけトラクション性能に優れていると言えるだろう。前後重量配分など、パッケージの適正化から従来以上に4WD的な設定にしても優れたハンドリング性能を得ることが可能となったということか。アテーサE-TSの制御も大きく進化したことが伺えるシーンだ。



■全開加速チェック
全開加速チェック
 氷上の直線路を使って、VDC制御の有・無で全開加速チェックを行った。GT-Rに搭載されるVDC-Rは、従来からあるENG出力とブレーキを制御する標準的なノーマルモードに加え、より積極的な走りが可能という4WD前後トルク配分との協調制御を加えたRモード、そしてVDC OFFがあり、これらの切り替えがSWひとつで行えるというスグレものだ。今回のテストではノーマルモードとVDC OFFをマニュアルシフトで比較してみた。
 VDC ON:アクセルは全開なのだが、トラクションコントロールが効いて適度なホイールスピンをしながらスムーズに加速。安心感も高く楽なドライビングが可能だ。
 VDC OFF:無駄なホイールスピンも多く、思ったほどクルマは前に進まない。車両姿勢も徐々に乱れるが、姿勢制御は入らない。このためかなり神経を使う。最終的にはご覧のように大きく姿勢を崩してコースアウト。VDCの必要性を痛感した瞬間だ。
 実際、VDC制御を効かした方が加速もスムーズで速いようだ。そして何よりも安心感が違う。ただし、速い分ブレーキングは早めに行う必要があるだろう。


■8の字旋回チェック
8の字旋回チェック
 2つのパイロンを置いた広場での8の字旋回テスト。同様にVDC制御の有・無比較だ。
 VDC ON:旋回中はアクセルを全開にしてもENGは全く反応しない。僅か10Km/h程度の車速でグリップ走行となる。ただし、次のパイロンに向う僅かな直線、ステアリングが直進状態になった瞬間にENGが反応し加速する。その結果、2つ目のパイロンではオーバースピードとなり、いかにVDCをONしていたとはいえ大きなアンダーステアとなる。この状態の時には、ブレーキも車両姿勢を安定させる方向に制御が入る。とは言え、これが一般路ならコースアウトだ。特にS字コーナーでは要注意。VDCの過信は禁物なのだ。
 VDC OFF:ラフなアクセル操作をすると、クルマは簡単に滑り出す。アクセルで簡単にドリフト状態にも持ち込めるし、タイミングが悪ければアンダーステアにもなる。ある程度、腕のあるドライバーなら、ドリフト状態で旋回しそのまま次のパイロンまで持ち込め楽しめるだろう。ただし、一つ目のパイロンから二つ目のパイロンに入る際の切り返し時の姿勢変化が遅く1740kgの体重の影響が見られた。この点さえ頭に入れておけば、結構楽しめそうな予感がしてきた。

■円旋回チェック
円旋回チェック
 続いて行ったテストは、単純な円旋回。本来ならより大きな円を3速で走るような定常円旋回テストを行いたかったのだが、コースの関係で2速ホールドの旋回テストとなった。ここでは、VDCノーマルモードに加えRモードもチェック。4WD前後トルク配分協調制御の片鱗が見られるかを試した。また、VDC OFFでは4WDシステムの基本特性も確認したい。
 VDC ノーマルモード:車載映像を見れば判るように、ゆっくりとしたグリップ走行でスロットルは全開にしていてもENG回転は上がらない。MFDのスロットル開度メーターも全開になっている。また、ブレーキの制御もフロントがホンの少し滑ったかなという時に、車両姿勢を安定させる方向に細かくクククッと入り姿勢を安定させてくれる。
 VDC Rモード:旋回しながらRモードに切り替えると、一瞬ENGが反応したがスグに制御が入り、ノーマルモードとほぼ同様の走りとなってしまった。残念ながらこのテストでは協調制御の確認はできなかった上に、ノーマルモードとの違いも確認できなかった。
 VDC OFF:さらにそのまま、VDCをOFFにすると一気にENG回転は上がり旋回スピードも高くなる。当然、ドリフト状態での旋回となる。一方、この時の旋回姿勢を見てみると、ステアリングはニュートラル付近で僅かにカウンター方向に切ったり、旋回方向に切ったりしている。これはフルタイム4WD車であるランエボやインプレッサの旋回姿勢とほぼ同じもの。新型GT-Rの4WDシステムは、FR的だった第二世代よりも確実に4WD的と言えるだろう。

■総合チェック アイスロード編
総合性能チェック
 女神湖特設コースの外周路を使って、総合的にアイスロードでの走りをチェック。
 VDC ON:スタート直後のストレートではスムーズな加速が可能だ。但し、コーナー手前のブレーキングは早めにしないとオーバースピードになるので注意が必要。S字コーナーでは完全なグリップとなり、ENGに制御が入る。また、フロントが滑りそうになった瞬間にブレーキに車両姿勢制御が入るので安心だ。VDC ONならブレーキングさえ注意すれば、氷の路面でも安心して走ることができるのだ。
 VDC OFF:ストレートの加速も注意が必要だ。不用意にアクセルを開けるとホイールスピンがはじまり姿勢も乱れる。コーナーでもテールが滑るのでドリフト状態となる。不用意なアクセル操作をすれば、スピンか大アンダーステアに見舞われるのだ。
 ドリフトを楽しみたいというなら別だが、一般的にはVDCは差動させておいた方がいいだろう。ちなみに、VDC OFFでもABSは作動してくれる。

■総合チェック スノーロード編
スノーロード性能チェック
 氷上コースよりもグリップの得られるスノーロードでは、走りを楽しめるかという視点でテストを行った。したがって、VDCはOFF。コースは道幅の比較的広い2、3速主体の圧雪路。前夜に降った雪が良い具合に踏み固められていて、スタッドレスでも充分なグリップが得られる。結果は、既にGTR-WORLD TVにアップしてあるように、圧雪路でのGT-Rの走りはかなりのものであった。印象深いのが、トラクション性能の高さとコントロール性の良さ。特に、コントロール性に関してはランエボやインプレッサを上回るのではないかと感じるほどイージーだった。そして意外にも1740Kgの重量を感じさせない。唯一気になる点は、S字コーナーでの切り返しの反応の遅さ。こればかりは体重の影響が出ているように思えた。いずれにせよ、かなり楽しい上に速いクルマなのでブレーキングだけは要注意だろう。



■総評

氷上という超低ミュー路でも、雪上でも十分以上のパフォーマンスを発揮することが確認できた。
 第二世代GT-Rの雪道での走りはFR的なものだった。それはそれで楽しくもあるのだが、リヤが出過ぎる傾向があり速さという点においても不満があった。これが、GT-Rは雪道が苦手と評された所以だろう。
 一方、新型GT-Rはトラクション性能も高くコントロール性も高い。コーナー進入時は、ステアリング操作でもスロットル操作でも簡単に姿勢変化をおこすことが可能だ。姿勢を作ってしまえば、後は高いトラクション性能と4WD車特有の安定した姿勢でコーナーを素早く脱出できる。一言でいえば、コーナー入り口がイージーなフルタイム4WDといったところ。実に楽しいクルマなのだ。
 実は某フルタイム4WD車を氷上でテストする機会を後日得た。その走りは、いかに最新の4WD車といえどもフルタイム4WD特有の曲がりにくいもの。ドライバーとしてはストレスを感じるのだ。そこであらためてGT-Rのストレスを感じさせない走りの素晴らしさを実感したのである。
 このストレスを感じさせない走りこそ、実は多くの人が望んでいた4WDのあるべき姿なのかもしれない。そう感じた。

 さて、当サイトでは、ドライ路面とウェット路面でのパフォーマンスは既にレポートしたとおり。辛口で有名なガンさんこと黒澤元治氏をもってしても「素晴らしい」と言わしめるほどの走りが確認された。<→過去のガンさんレポートにリンク
 一方、スノーロードでも素晴らしい走りが確認された。日産のwebサイトには、「“雪道は不得意”といったフレーズが従来のスーパーカーには付きものでしたが、NISSAN GT-Rは雨や雪の路面をも運転を楽しむためのスポーツフィールドに変えてしまいます」とある。
 NISSAN GT-Rは確かにスノーロードさえも楽しむことができる「マルチパフォーマンススーパーカー」だったのだ!



BLIZZAK LM-25
ランフラットだ。サイズはフロント255/40-20、リヤ285/35-20と純正タイヤと同じサイズ。価格はホイール込みで120万円!!一般的なスタッドレスに比べ、各ブロックの高さが低い。このため、ドライ路面での走りは意外にも良い。また、雪や氷の路面でのグリップは一般的なスタッドレスタイヤと同レベルなので不満はない。さすがGT-R専用スタッドレスといったところか。



女神湖特設コース「MeWDL」
毎年1月中旬から2月中旬にかけて造られる。様々なコースがあり、ドライビングレッスンや走行会なども開催されている。GT-Rに限らず、クルマの挙動をマスターするには最適なコース。なにしろミューが低いので10キロ程度の車速でもクルマは簡単に滑り出す。コースアウトしても雪の壁だし、そもそも車速が低いのでダメージは少ない。
お問い合わせ:MeWDL事務局 電話0267-55-6341 www.megamiko-center.com/mewdl