R35GT-R 黒沢元治が斬る!前編
2007/12/21
カテゴリ: テスト&レポート
ライター: GTR-World.net
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過去との決別 GT-R新章へ…
新型R35GT-R 黒沢元治が斬る! ~前編~
プロローグ
2リッターNA+FRの第一世代GT-R、2.6リッター・ツインターボ+トルクスプリット4WDの第二世代、そして3.8リッターV6・ツインターボ+トランスアクスル4WDの第三世代。
振り返ってみれば、GT-Rというクルマは、1969年の第一世代誕生以来、突然変異と言っていいほど常に人々を驚かせる、時代の先端を行くクルマだった。同じGT-Rの名前を冠していても、3世代の間にはそれぞれに大きな技術的進化があった。第一世代のハコスカ&ケンメリと第二世代の4WD・GT-Rとの間には、直列6気筒エンジンを搭載しているという以外に、共通項はない。日産が「新型GT-Rは今までのGT-Rとは別のクルマ」と説明しているのもうなずける。
しかし、GT-Rという名を継承するからには、フィロソフィーとしてのDNA継承があったはず。第一世代、第二世代ともそもそもの開発主眼は「レースに勝てるクルマ」だった。そのために排気量やクルマの大きさなどにもこだわりがあった。第三世代たる新型GT-Rは、今までの流れとまったく決別してしまったのか…。いや、決別することにより、全天候型スーパーカーという新しいステージに立とうとしているのか?
初代GT-Rの誕生からレースでの活躍に大きく貢献し、第二世代GT-Rの進化もニュルブルクリンク試乗を含めてつぶさに見てきた「ワークスGT-R使い」黒沢元治が新型GT-Rをストリートとサーキットで斬る。
chapter 1 『ヤギさんコーナーにて量産GT-Rに乗る』
新型GT-Rの試乗は、今回で2回目だ。1回目は西仙台、仙台ハイランドでの試乗会。雪の降った2、3日あとで、外からの雪解け水が川になっている状態で走った。その時のタイムは、2分02秒。日産の開発スタッフによると、通常より3秒ぐらいラップタイムの遅い路面状態だったらしい。完全ドライなら2分を切れるというところか。
1コーナー、2コーナーを回った短い直線のところで、タイヤが川を走った後で濡れていたせいか、一瞬、4駆が効かずにオーバーステア現象みたいなのが出たり、上りのS字で一瞬アンダーステアが出たりするところがあったが、いずれにしてもすごく速いクルマだなっていうのが感じられた。
車重が1740kgという数字を聞いたときには「そんな重いクルマで走れるのか?」という疑問もあったが、実際にはその重量を感じさせないほどの制動力、トラクションがあり、コーナリングパフォーマンスは確かに想像以上だった。
2回目の今日は、箱根のワインディング。同じ条件、同じ状態で全開にしたわけじゃないので断言はできないが、コンフォートにしたり、スポーツモード、あるいはRモードで走った感じは、仙台ハイランドの周辺の一般路を走った時と比較して、メーカー試乗会に使ったクルマとこの売り出されたクルマの差というのは感じられない。同じように良く出来ている。むしろ、ボディの剛性感みたいなものは、この量産スペックの方がしっかりしている気がする。エンジンがちょっと重いか? という感じもするが、それもナラシ直後の2000kmという今日の撮影車の走行距離とサーキットを走りこんだ広報車との差とも思われる。
いずれにしても、今日は仙台ハイランドの後、一般道をちゃんと走ったというのは初めてで、しかも今日は広報車と量産車を直接比較することは出来ないが、絶対評価としてはかなりよくできていると感じた。アップシフト、ダウンシフトも結構速いし、スタビリティコントロールもうまく作動している。480馬力といわれると、そのパワーは十分出ているといえる。そういった意味では、量産車としてもきちんと出来ているなと思う。
ただし、不満が無いわけでもない。ミッションのギア比の設定に疑問を感じる。2速で行くと低いし、3速だと重い。そう、かったるいのが現在のギア比設定だ。ハイパフォーマンスなのにハイギアだとも感じる。今日の箱根でも、2速、3速の間、2速をもう少し下げて3速をもっと2速に近づけ、4速を3速ちょっとオーバーぐらいにしておくと、ワインディングで2、3、4とパーンバーンと使えると思う。
一方、3.8リッターV6ツインターボのトルクはすごい。60kgmということは、6リッターV12のR382とほとんど変わらないはず。確か、オレが1969年の日本グランプリで乗ったR382の最大トルクは62kgmだった。それくらいのトルクを、このクルマはわずか3200回転で出してる。とにかくエンジンのパワー、トルクはあるよ。
足回りは、20インチであんな超扁平タイヤ使っている割にはワンダリングが少ないし、接地性変化も当然少ない。結構上質になっている。もうちょっとバタバタするかと思った。開発ドライバーの鈴木利男君は「個人的にはリアのストロークをもうちょっと取りたかった」というけども、水野主管が「もうこれでいい」と言い切っちゃってやめたらしいけど、まぁ悪くない。十分、芦ノ湖スカイラインで楽に走れた。
ボディの剛性、取り付け、特にフロントがしっかりしている。だから結構、上質な走りをする。このクルマが売り出されても、その辺の若いドライバーが扱いきれずに事故るとか、そんなことはないだろう。100km/hでしか走れないところを180km/hで行っちゃったとかは別として。
chapter2 『新型GT-Rの開発には有名レーシングチームが参加』
メディアやマニアは、どうしても今までのGT-Rと並べて比べたいんだろうけど、オレにいわせると新型GT-Rは、まったく別のクルマだ。顔が似ていて、たとえばGT-Rのロゴなんか同じにしているけども、これ、本当はGT-Rでなくてもよかったのでは?とも思う。
従来のR34 GT-Rまでは、通常のクルマと同じく100%日産の開発チームがやってきたけども、水野主管自身もいっているとおり、新型GT-Rの開発で厚木のテクニカルセンターで仕事したのは事務的なことだけ。後は全部、現場でやった。現場っていうのは、ニュルブルクリンクであり仙台ハイランドということだ。そこで100%とはいわないけども、国内の有力レーシングチームのエンジニアと一緒に開発をやってきたわけだ。手法はレーシングカーの開発と同じ。
開発ドライバーの鈴木利男君が走って、ここが遅い、ここをこうしたいというところをどんどん直していく。データで取りながらそれを速くするために、グラフの谷をどんどん埋めてきたみたいなね。そんな開発が行なわれたわけだ。実際に見たわけではないが、フェラーリやポルシェでも同じような開発方法だと思う。
今までの日産の手順なら、変更箇所がわかっても検証や耐久試験に時間を取られて、なかなか先に進めなかった。ところが、今回はとにかく直して先へ進むという、水野主管が担当したかつてのグループCカーの開発と同じプロセスで開発を進めたのだ。通常の耐久や品質などの試験なんかは後回しにして。
それが最終的には、フロア下のオレはまだ見てないが、それの剛性の出し方とか、フロントのラジエターのあたりにあるバルクヘッドの作りになって現れていると思う。カーボンのそれ、どう見てもレース屋で焼いたカーボンみたいだな。
それを今までの開発方法で作られたR34 GT-Rと比較しても、比較にならないのは当然か。今回、R34 GT-RをニスモがチューンしたZ-tuneというコンプリートカーを比較対象として用意してもらったが、時代が違うとすら思う。
500馬力以上という、Z-tuneのパワーだけはすごいね。一気にドカーンってくる。それでいてサスストロークがないから、すぐ飛び跳ねちゃう。サーキットとか路面のいいワインディングは気持ちいいだろうけども。この芦ノ湖スカイラインだと乗りにくい。これでは単なる希少価値で、新型GT-Rがデビューした今となってはそれだけの物にしかならない。
R34 GT-Rのチューニングカーとは、一旦できちゃったものに後で剛性を足したりすると、それなりに剛性は上がるけども、お金かけたほどのことは成果が出ない。たとえ曲げ剛性が上がっても、ねじり剛性や振動剛性が上がるかというとそれはまた別なのだ。ひとつの目的の剛性値は上げようと思えば上げられるけれども後付けでやると高くなる。しかも、うんと高くなる。
もう、あれこれいわなくてもいいはずだ。R34 GT-Rのニスモ製のチューニングカーが1750万円、今度の新型のベース価格が777万円。それだけで説明は要らない。
(取材・構成/GTR-WORLD.net編集部)
新型R35GT-R 黒沢元治が斬る! ~前編~
プロローグ
振り返ってみれば、GT-Rというクルマは、1969年の第一世代誕生以来、突然変異と言っていいほど常に人々を驚かせる、時代の先端を行くクルマだった。同じGT-Rの名前を冠していても、3世代の間にはそれぞれに大きな技術的進化があった。第一世代のハコスカ&ケンメリと第二世代の4WD・GT-Rとの間には、直列6気筒エンジンを搭載しているという以外に、共通項はない。日産が「新型GT-Rは今までのGT-Rとは別のクルマ」と説明しているのもうなずける。
しかし、GT-Rという名を継承するからには、フィロソフィーとしてのDNA継承があったはず。第一世代、第二世代ともそもそもの開発主眼は「レースに勝てるクルマ」だった。そのために排気量やクルマの大きさなどにもこだわりがあった。第三世代たる新型GT-Rは、今までの流れとまったく決別してしまったのか…。いや、決別することにより、全天候型スーパーカーという新しいステージに立とうとしているのか?
初代GT-Rの誕生からレースでの活躍に大きく貢献し、第二世代GT-Rの進化もニュルブルクリンク試乗を含めてつぶさに見てきた「ワークスGT-R使い」黒沢元治が新型GT-Rをストリートとサーキットで斬る。
Text: Motoharu Kurosawa
Photo: Chikara Kitabatake
Photo: Chikara Kitabatake
chapter 1 『ヤギさんコーナーにて量産GT-Rに乗る』
新型GT-Rの試乗は、今回で2回目だ。1回目は西仙台、仙台ハイランドでの試乗会。雪の降った2、3日あとで、外からの雪解け水が川になっている状態で走った。その時のタイムは、2分02秒。日産の開発スタッフによると、通常より3秒ぐらいラップタイムの遅い路面状態だったらしい。完全ドライなら2分を切れるというところか。
1コーナー、2コーナーを回った短い直線のところで、タイヤが川を走った後で濡れていたせいか、一瞬、4駆が効かずにオーバーステア現象みたいなのが出たり、上りのS字で一瞬アンダーステアが出たりするところがあったが、いずれにしてもすごく速いクルマだなっていうのが感じられた。
車重が1740kgという数字を聞いたときには「そんな重いクルマで走れるのか?」という疑問もあったが、実際にはその重量を感じさせないほどの制動力、トラクションがあり、コーナリングパフォーマンスは確かに想像以上だった。
2回目の今日は、箱根のワインディング。同じ条件、同じ状態で全開にしたわけじゃないので断言はできないが、コンフォートにしたり、スポーツモード、あるいはRモードで走った感じは、仙台ハイランドの周辺の一般路を走った時と比較して、メーカー試乗会に使ったクルマとこの売り出されたクルマの差というのは感じられない。同じように良く出来ている。むしろ、ボディの剛性感みたいなものは、この量産スペックの方がしっかりしている気がする。エンジンがちょっと重いか? という感じもするが、それもナラシ直後の2000kmという今日の撮影車の走行距離とサーキットを走りこんだ広報車との差とも思われる。
いずれにしても、今日は仙台ハイランドの後、一般道をちゃんと走ったというのは初めてで、しかも今日は広報車と量産車を直接比較することは出来ないが、絶対評価としてはかなりよくできていると感じた。アップシフト、ダウンシフトも結構速いし、スタビリティコントロールもうまく作動している。480馬力といわれると、そのパワーは十分出ているといえる。そういった意味では、量産車としてもきちんと出来ているなと思う。
ただし、不満が無いわけでもない。ミッションのギア比の設定に疑問を感じる。2速で行くと低いし、3速だと重い。そう、かったるいのが現在のギア比設定だ。ハイパフォーマンスなのにハイギアだとも感じる。今日の箱根でも、2速、3速の間、2速をもう少し下げて3速をもっと2速に近づけ、4速を3速ちょっとオーバーぐらいにしておくと、ワインディングで2、3、4とパーンバーンと使えると思う。
一方、3.8リッターV6ツインターボのトルクはすごい。60kgmということは、6リッターV12のR382とほとんど変わらないはず。確か、オレが1969年の日本グランプリで乗ったR382の最大トルクは62kgmだった。それくらいのトルクを、このクルマはわずか3200回転で出してる。とにかくエンジンのパワー、トルクはあるよ。
足回りは、20インチであんな超扁平タイヤ使っている割にはワンダリングが少ないし、接地性変化も当然少ない。結構上質になっている。もうちょっとバタバタするかと思った。開発ドライバーの鈴木利男君は「個人的にはリアのストロークをもうちょっと取りたかった」というけども、水野主管が「もうこれでいい」と言い切っちゃってやめたらしいけど、まぁ悪くない。十分、芦ノ湖スカイラインで楽に走れた。
ボディの剛性、取り付け、特にフロントがしっかりしている。だから結構、上質な走りをする。このクルマが売り出されても、その辺の若いドライバーが扱いきれずに事故るとか、そんなことはないだろう。100km/hでしか走れないところを180km/hで行っちゃったとかは別として。
chapter2 『新型GT-Rの開発には有名レーシングチームが参加』
メディアやマニアは、どうしても今までのGT-Rと並べて比べたいんだろうけど、オレにいわせると新型GT-Rは、まったく別のクルマだ。顔が似ていて、たとえばGT-Rのロゴなんか同じにしているけども、これ、本当はGT-Rでなくてもよかったのでは?とも思う。
従来のR34 GT-Rまでは、通常のクルマと同じく100%日産の開発チームがやってきたけども、水野主管自身もいっているとおり、新型GT-Rの開発で厚木のテクニカルセンターで仕事したのは事務的なことだけ。後は全部、現場でやった。現場っていうのは、ニュルブルクリンクであり仙台ハイランドということだ。そこで100%とはいわないけども、国内の有力レーシングチームのエンジニアと一緒に開発をやってきたわけだ。手法はレーシングカーの開発と同じ。
開発ドライバーの鈴木利男君が走って、ここが遅い、ここをこうしたいというところをどんどん直していく。データで取りながらそれを速くするために、グラフの谷をどんどん埋めてきたみたいなね。そんな開発が行なわれたわけだ。実際に見たわけではないが、フェラーリやポルシェでも同じような開発方法だと思う。
今までの日産の手順なら、変更箇所がわかっても検証や耐久試験に時間を取られて、なかなか先に進めなかった。ところが、今回はとにかく直して先へ進むという、水野主管が担当したかつてのグループCカーの開発と同じプロセスで開発を進めたのだ。通常の耐久や品質などの試験なんかは後回しにして。
それが最終的には、フロア下のオレはまだ見てないが、それの剛性の出し方とか、フロントのラジエターのあたりにあるバルクヘッドの作りになって現れていると思う。カーボンのそれ、どう見てもレース屋で焼いたカーボンみたいだな。
それを今までの開発方法で作られたR34 GT-Rと比較しても、比較にならないのは当然か。今回、R34 GT-RをニスモがチューンしたZ-tuneというコンプリートカーを比較対象として用意してもらったが、時代が違うとすら思う。
500馬力以上という、Z-tuneのパワーだけはすごいね。一気にドカーンってくる。それでいてサスストロークがないから、すぐ飛び跳ねちゃう。サーキットとか路面のいいワインディングは気持ちいいだろうけども。この芦ノ湖スカイラインだと乗りにくい。これでは単なる希少価値で、新型GT-Rがデビューした今となってはそれだけの物にしかならない。
R34 GT-Rのチューニングカーとは、一旦できちゃったものに後で剛性を足したりすると、それなりに剛性は上がるけども、お金かけたほどのことは成果が出ない。たとえ曲げ剛性が上がっても、ねじり剛性や振動剛性が上がるかというとそれはまた別なのだ。ひとつの目的の剛性値は上げようと思えば上げられるけれども後付けでやると高くなる。しかも、うんと高くなる。
もう、あれこれいわなくてもいいはずだ。R34 GT-Rのニスモ製のチューニングカーが1750万円、今度の新型のベース価格が777万円。それだけで説明は要らない。
(取材・構成/GTR-WORLD.net編集部)









