日産自動車栃木工場。エンジン本体はここではなく横浜工場で組み立てられたあと、この栃木工場へ運ばれる。
仙台ハイランドでのGT-Rのグローバル試乗会に先駆けて、日産はGT-Rを生産する工場の取材ツアーをセッティングしてくれた。まず向かったのはVR38DETTを生産する横浜工場。Formula 1のワークショップを思い起こさせるようなクリーンルームで新型GT-Rのツインターボエンジンは、細心の注意を払って組み立てられている。


Text: Dino Dalle Carbonare
Photo: Dino Dalle Carbonare
Translation: Shin Inoue







横浜工場内にある、VR38DETTエンジン専用のクリーンルーム。温度、湿度も常時一定に管理されている。
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さて、クリーンルームにオールアルミ製のエンジンブロックが入って来ると、そこからは最初から最後まで1人の職人の手によって組みつけられていく。エンジンコンポーネントの汚れを防ぐために、クリーンルーム内の室温と湿度は一定に保たれ、“匠(たくみ)”と呼ばれるスペシャリストの手によって、じっくりと時間をかけて1基ずつ着実に組み立てられる。この3.8L V型6気筒エンジンは200分をかけて組み立てられ、これはすなわち1日に“たった”27基のエンジンしか作ることができないことを意味するが、日産は欧米での発売に合わせ、生産台数を増やせるように体制を増強する計画をしている。エンジンが完成すると、エンジンベンチダイナモメーターでパワーとトルクの出力カーブのチェックを行う。チェックを通ると、このエンジンはGT-Rを生産する日産栃木工場へ運ばれるのだ。もちろん、僕も栃木工場へ移動した。



組み立てられたサスペンションレイアウト。レーザーアライメントテスターによる組付け精度の検査のあと、メインの車体組み立てラインへ移動する。
栃木工場は栃木県の宇都宮市からさほど遠くない場所にある。工場に入ると、僕たちはGT-Rの国にいることを改めて認識する。工場のエントランスにあるロビーには新型のR35 GT-Rが堂々と展示されているのだ。
ツアーが進むにつれ、GT-Rの他のコンポーネンツもエンジンのときと同じような注意深さで組み立てられていくことにさらに驚くこととなった。工場の一角では、GT-Rのフロントとリヤのサスペンションレイアウトが組み立てられている。これも数人の選ばれた特別な技術者の手によるものだ。そして、ボルグ・ワーナー製のトランスアクスル・トランスミッション(これも1人の技術者による手組みだ!)、ブレンボ製の巨大なフローティングディスクとキャリパー、そして他のサスペンションパーツがリヤサスペンションサブフレームに搭載される。同様に、フロントサスペンションの部品もフロントサスペンションサブフレームに搭載され、その後、非常に精度の高いレーザーアライメントテスターによる検査を受けることとなる。レーザー光線のセットで、サスペンションのジオメトリーと公差(許容誤差)が測定され、調整されるのだ。


エンジン、サスペンション、内装部品などが車体にどんどん取り付けられていく。GT-Rが出来上がっていく瞬間だ。
そしてついに、メインの組立ラインへと移動する。このラインでは、日産スカイラインと、インフィニティG35やG37に混じってGT-Rが流れてくる。シャシーの組み立てや加振検査、ボディの塗装の工程については残念ながら見せてもらうことができなかった。シャシーの組み立てなどは、カーボンファイバーやアルミニウム合金などの複合素材を組み合わせて作り上げるなど、日産は革新的な技術を持って製造しているので、この部分に企業秘密が詰まっていることは想像に難くない。今回のファクトリーツアーでその部分を見せてもらうことができなかったのも納得できる。エンジンがメインの製造ラインに入って来ると、エンジンが下からエンジンベイにリフトアップされ、多くのスタッフによって慎重にボディに取り付けられる。




室内では、ワイヤリングハーネスがまず取り付けられる。ダッシュボード、トリム、シートなどが取り付けられると、内装は完成だ。
そして、次はインテリアだ。ワイアリングハーネスがまず取り付けられ、そしてダッシュボードが組みつけられる。そしてその他の内装部品が組みつけられていく。ラインを進むと、先ほど組み立てられたサスペンションサブフレームとトランスアクスルギヤボックスが車体の下側からリフトアップされ取り付けられている。ビルシュタイン製のダンパーやホイールアーチライナーなどの周辺部品も次々と取り付けられていく。こうしてメインの製造ラインの最後までたどり着くと、そこにはローラーが設置されている。ここで約120km/hくらいでローラーの上を走行し、エンジンやドライブトレインなどの動作チェックが行われる。その後、明るい品質管理ラインへ運ばれ、作業員がボディパネルのギャップやインテリアトリムのフィッティング、塗装のクオリティ、そして全体の組付け精度などの品質チェックを行う。




ラインの最後に、ローラー上でエンジン、ドライブトレインなどの動作チェックを行う。
完成したGT-Rはラインの建物の外へ運ばれ、テストドライバーの手に渡される。ブレーキのテストだ。このブレーキテストは全般的なテスト走行と同時に、より集中的なテストとして栃木工場の一角にある小さなテストコースで一台一台行われる。このテストでは、ブレンボのブレーキシステムとデュアルクラッチシステムの動作、品質確認を行う。テストコースでテストドライバーは3速全開まで加速をし、アクセルペダルを踏み続けたまま、ブレーキペダルを思いっきり踏み込む。この操作が何周か繰り返されたあと、車は工場に戻され、最終的な品質チェックを受けるのだ。






通常の新車に対して行なう検査項目に加え、エンジンの過給圧チェック、ブレーキの焼き入れ、サスペンションのフリクション除去、ミッションのナラシを行なうというもの。
このテストは、お客様がディーラーでGT-Rを受け取ったそのときから100%のパフォーマンスを発揮できるようにするために行われている。とはいうものの、日産はエンジンとギヤボックスをなじませるため購入後2000kmは慣らしを行うよう強調している。そうそう、栃木工場では偶然、北米仕様の左ハンドルR35 GT-Rテストカーを目撃した。北米仕様のGT-Rはフロントとリヤのサイドマーカーの色が異なるため識別しやすい。ちなみに、北米仕様のGT-Rの最高出力は日本仕様の480馬力よりも30馬力低い450馬力になるという噂がある。アメリカのガソリンのオクタン価への対策のようだ。

今回の工場見学ツアーを終えて、まだ理解できないことが残った。「777万円なんて、安すぎるよ、日産さん!」

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